突然ですが、皆さんは、小さい頃、何かに憧れた、憧れに向かって何かに取り組んでみた、という経験がありますか?
私は思い返してみると、様々な憧れがあったのですが、小さいもので言うと、「かけっこの速い2つ年上の近所のお兄さん」への憧れがありました。スタートで転んでしまい、大幅に遅れをとっても、ものすごいスピードで前の走者たちを抜き去っていき、1位をもぎ取っていくそのお兄さんの姿。「あのお兄ちゃんみたいに、ぼくも速くなりたいな~!」と思って、学校の行き帰り、たくさん走っていたことを、今でも覚えています。
話は変わるのですが、昨年の9月に実施した「青空教室」にて、「先輩の姿から学ぼう」と頑張るある男の子がいたので、そのことを紹介いたします。
その「青空教室」では、「伝言ライター」というプログラムを行いました。--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
~「伝言ライター」とは?~
(簡単に言うと・・・)
制限時間内に、「用意されている絵」を真似して、各班協力して描いていくプログラムです。
(流れ・ルール)
1 班を二つに分け、さらに分かれたチーム内で、「『メッセンジャー』チーム」と「『ライター』チーム」に分かれます。
2 ルール
●「メッセンジャー」チームのルール
①
お題の絵を見に行きます。ただし、見た情報はメモをすることはできません。
②
「ライター」チームに見た情報を伝えます。伝えるときに、「詳しく伝えられているか」がポイントです。
③
「メッセンジャー」チームは、絵を描くことができません。
④
途中で、絵を見に行けるのは「メッセンジャー」チームのみです。
●「ライター」チームのルール
①
「ライター」チームは、「メッセンジャー」チームから伝えられる情報をもとに、模造紙に絵を描いていきます。描くときには、マーカーを使って、色も塗る必要があるものは、しっかり色を塗って描きます。
②
「ライター」チームは、絵を見に行くことはできません。
③
「メッセンジャー」チームから伝えられる情報はたくさんあるので、チームで手分けして描いていきます。
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※上の絵がお手本、下が子どもたちの作品の一つです。漏れなく描けていることが分かりますね!
ある1年生の男の子と6年生の女の子がメッセンジャーチームになり、2人で絵を見に行っていました。彼の目には、「魚がいて、その目の色が白色」という情報だけが入ったのか、猛ダッシュでその情報だけを持ち帰り、班の子どもたちに伝えていました。プログラムはまだ始まったばかりの時間帯に、しかも非常にピンポイントな情報が班に入ってきたのです。想像できると思いますが、その細かい情報だけでは、絵も描きづらいです。班の子どもたちは戸惑っていました。その時、一緒に行った女の子が遅れて帰ってきました。彼女が持ち帰った情報は、「魚が5匹いて、どの魚も色が黒で、目の色が白だった。5匹とも左上にいた。」というものでした。先に帰ってきた男の子と同じ魚を見ていたのでしょうが、細かいところまで伝えてくれていました。もちろん、班の子達の筆は進みます。
細かく、上手に伝えていた女の子の姿を見ていたその男の子はどうするのかな?と思い、私はそこから男の子の追跡を始めました。また女の子と一緒に絵を見に行き、そしてまた女の子よりも早い段階で班に戻りました。
同じ事の繰り返しになるかな?と、少し不安に思っていましたが、その不安は杞憂に終わりました。「右上にも魚がいて、それは中が青くて・・・」と、彼の口からは、さっきの6年生の女の子の伝え方を真似しようとした言葉が出てきました。もちろん、6年生の女の子のように、細かい情報をたくさん伝えられるわけではないので、すぐに「また見てくる!」と急いで帰っていきました。その後も、6年生の女の子と同じクオリティで伝えられたわけではないですが、始めに情報を伝えた時より、聞いた人が書きやすく伝えようと頑張る姿をたくさん見せてくれました。
「もっと広く、細かく見てきなさい」と口で言うことは簡単です。ただ、子ども達にとっては、「誰かがうまくやっている姿」を見た方が真似しやすいものです。また、広く細かく見てきた子の情報伝達が成功している姿を見て、「うまくいって楽しそう!」と思えるはずです。そして、うまくいくために、それぞれが主体的に考えながら、試行錯誤して、少しずつできていくのだと思います。
「いいこと」「楽しいこと」「かっこいいこと」を真似したくなる、やりたくなる、そのために主体的に学んでいくから、子どもたちは成長するのだなぁ、と改めて実感させられました。
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※現在、花まる学習会のメソッドを取り入れて、武雄市や長野県の北相木村で定期的に行われている「青空協室」は、出張授業も行っております。
(仲間と協力して課題解決を目指すという狙いを、より深く追究するため、「青空教室」から「青空協室」へ、今後名称を変更します。)
出張授業は、「年間○回」という定期的実施の形でも、宿泊教室などのプログラムの一つとして単発で実施する形でも可能です。ご希望次第で相談させていただきます。
「野外での学習プログラム」にご興味のある方は、以下のアドレスまで、ご連絡をいただければと思います。
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