2017年7月24日月曜日

第31話「一人で考えるより」(花まる:富永)

今年度から官民一体型学校が始まった武雄市立西川登小学校で、2回目の青空協室が行われました。

青空協室では、教科の枠に捉われずに、集団での課題解決型学習に重点を置いた様々なプログラムを行います。「こうしたらどうだろう?」と試し、上手くいかなければもう一度考えて試すというサイクルを、体を動かしながらゲーム感覚で実践します。「青空」なので屋外での活動に思えますが、天候やプログラム内容に応じて、広い場所であれば体育館でも行えます。活動形式にも特徴があり、異学年混合の縦割り班で実施します。そうすることで、仲の良い友達とだけでなく、色々な人と一緒に力を合わせる経験をするのです。また、毎回異なるプログラムを行うため、子ども達はその場で初めて聞く内容に対して知恵を振り絞って取り組みます。もちろん、学校の先生達には事前にプログラムの目的やルール、当日の流れなどを共有しておきます。


今回行ったプログラムは『ぴったりメイキング』。物差しやメジャーなどを使わずに3mの長さ、50cmの高さを測ります。他の小学校でこのプログラムを行った時、大人がヒントを出さなくても、自分たちの身長や足の大きさを利用して長さや高さを測っていました。高さ編では50cmを測るだけでなく、身の回りにある物を積み上げて50cmのタワーを作らなければいけません。50cmに近づけるため、何をどういう順番で積み上げるかも活動のポイントになります。


このプログラムの説明を先生方にしたとき、「身の回りの物とは、例えばどんな物ですか?」という質問が出ました。活動場所が校庭であれば、石や木の枝など自然物を使えます。けれど、雨天のため体育館での活動になると、使えるものは上履きやタオル、活動のために持ってきたバインダーぐらいに限定されてしまいます。それでも「50cmに近づけるため、どう積み上げるか」という視点で取り組めば意味がある、ということで一度話は終わりました。

さて、いよいよ迎えた当日。生憎の天気のため、活動場所は体育館に変更。すると教頭先生から、「やっぱり体育館だと使える物が少なすぎてつまらないよね。」と声をかけられました。何か良い手立てはないかと話していると「『教室にあるもの何でも使っていい』だったら面白いのに。」と斬新な意見が出ました。とても良いアイディアなのですが、『何でも使っていい』は安全管理が難しくなるため却下されました。

 そこで『体育館から一番近い12年生の教室から3つだけ、各班好きなものを持ってきてもいい』というルールを提案しましたが、今度は教務主任の先生が「教室の物だと担任の先生が困ってしまう。」とおっしゃいました。教頭先生、教務主任の先生、私の3人で話した結果、『班の12年生の私物を3つだけ持ってきてもいい』と、使える物の対象をより限定しようとなりました。

ところが、「取りに戻る時間がもったいないよね。」ともう一度悩み出した教頭先生。数秒考え込んで、「『体育館に移動する時、何か1つ自分の持ち物を全員持ってくる』はどうかな?」と、新しい案を出してくださいました。確かにそれなら、時間を有効活用できます。あえてどんな活動に使うのかを言わずに『持ち物を1つだけ』とすれば、子ども達が持ってくる物は様々で、工夫の仕方も班ごとで幅が出るでしょう。


急遽ルールを変更して実施することになった青空協室。狙い通り、子ども達が持ってきたものは実に多種多様でした。ランドセル、リコーダー、傘、本、したじき、おはじき、赤鉛筆一本…。使える物がばらばらなため、工夫のポイントも様々でした。

傘に「55cm」とシールが貼られているのに気が付き、それを物差し代わりに使う班。



ランドセルのように大きな物がない班は、どうにか高さを出そうと本の置き方を工夫していました。
持ってきた物だけで自立させるのが難しかったのか、壁に立てかけて使う班もありました。(ルール説明の時、「50cmを高さにする」としか言っておらず、「立てかけてはいけない」とは言っていませんでした。)


これだけ班ごとに特徴ある工夫をできたのは、教頭先生が妥協せずに「もっと面白い活動にするため、良い方法はないか」と考え続けてくださったからです。ですが、教頭先生が最後に出した案も、一人で考えたわけではありません。現実的な案かどうかはさておき、複数人で「こうしたらどうだろう?」「こんな事ができたらいいよね。」と言い合った結果です。

学校の先生達の意見を取り入れることで、私達が提供するコンテンツもさらに進化します。「官」の中に「民」が入るだけではない、一緒になって作り上げる。そんな官民一体型学校の形が、今回の青空協室で垣間見られました。

○●青空協室の詳しい様子は西川登公民館HPで見られます!●○
【西川登公民館】第2回 青空協室

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