2017年9月26日火曜日

第32話 見守ることの真の力 (花まる:前原)

 ある日、とある町の小学校の「花まるタイム」後に、地域の方からこう声をかけられた。

 「6年生は、去年よりもさらにメリハリつけて頑張っているよね~!すばらしか!」

朝の「花まるタイム」に足を運んでくださる地域の方々は、子どもたちの姿に感動して帰られることが多く、「花まるタイム」が地域の方々にも元気を与える場にもなっていると感じている。
いつも地域の方々からの感動の声をありがたく思ったのだが、何より「去年よりもさらに」という言葉がうれしかった。

「他にも『子どもたちの変化』に関する声があるのだろうか」

話しかけてくださった方の「去年よりもさらに」という言葉が気になり、過去の記録をさかのぼってみた。
※この町では、朝の「花まるタイム」の後、地域の方に感想を書いてもらっているので、このようにしっかりと振り返ることができる。
 
「どんどん姿勢正しく、文章を写せるようになってきてびっくりです!」
6年生、回を増すごとに子どもたちの成長を感じます」
4年生、前に来たときは、音読の時の元気ばかりが目立っていましたが、今となっては、元気な音読からパッと切り替えて、集中して計算に取り組めている姿も目立ってきて、この変化は本当にすごいですね!」

ここで取り上げた声はほんの一部だが、集計されたアンケートからわかったことは、子どもたちの頑張りや変化に地域の方が気づき、喜んでくれている声が、回数を重ねるにつれ、どんどん増えてきていることだ。

このアンケートをまとめた数値がある。「子どもたちや学校の姿を見ての好意的な声」が全体の何割かをまとめたデータだ。スタートして3か月、好意的にとらえる意見は全体の8割。これでも十分高い。
 
驚いたことはこの先だ。

 次の3か月は、85分にまで上がり、そして年度末の3か月で9割にまで上がった。
 それぞれの期間の対象母数にほとんど差がなかったので、この変化は大きい。

 この学校で「官民一体型学校」の取り組みが始まる前のことを思い返してみた。
 新たに始まる取り組みについて、各公民館に話をして回った際、「子どもたちや学校についてどう思っていらっしゃいますか?」と質問をする時間を毎回とっていたのだが、

「最近の学校の先生は、本当に忙しそうだよね」と学校のことを心配してくれる声や、
「孫がお世話になっています」と学校への感謝の声など、
様々な声が上がっていた。町の子どもたち・学校に関心がある証拠と思っていたのだが、中には、

「最近の子どもたちは全然挨拶をしてくれない」
「元気なく学校に登校している様子が気になる」
「子どもたちが怖くて話しかけづらい」

など、子どもたちに関してのマイナスな声も聞かれ、驚いた記憶がある。
 
 ただ、そこで意見を出してくださった方も、「我が町の小学校を良くしたい!」という思いを持って、足を運んでくださっている。

 地域の方が朝の「花まるタイム」に足を運んでくださるようになった当初は、

 「朝だからか、少し眠そうな様子が気になった」
 「鉛筆の持ち方が気になりました」

と、子どもたちの様子について、ご指摘いただくこともあった。
しかし、それはほんの一部で、
 
「子どもたちがブロックに取り組む姿を見て驚きました。私たちが思っていた以上に、パパッと考えられる姿がすごいです!」
「私たちが昔習ったような古典を元気な声で、スラスラと読む姿に感動しました」

と、これまで見たことがなかった子どもたちの一面に驚きの声が多数聞こえてきた。

 

 
ここで、何が起こっていたのか、改めて考えてみた。
(1)説明会のときにあがった声からもわかるように、町でたまに見る子どもの姿を見て、「今の子どもたち大丈夫?」と不安を抱いている人もいた。
 
(2)ところが、学校での子どもたちの姿を見て、「これまで見たことない、子どもたちの頑張る姿を見られた。すごい!」と、これまでの子ども観にはなかった面に気づかされ、見方が変わる。
 
(3)地域の方からの「頑張っているね」と認める声がかかり、それが子どもたちの喜びになり、子どもたちにパワーがみなぎる。さらに頑張る姿が見られるようになる。
 
(4)さらに成長した姿を見て、「もっとすごくなっている!すごいね~」と大人が驚く。
 

「社会に開けた学校づくり」と叫ばれている昨今。地域の方が通学路に立って子どもを見守ってくれたり、ゲストティーチャーとして話をしてくれたり、様々な事例がある。しかし、それらの事例ではなかなか気づくことができない、また起こりえないことがこの「花まるタイム」を通して起こっている。


 「学校に足を運んでいるけど、私たちは何か力になっているのかな?」とよく聞かれるが、私は胸を張って答える。

「はい、もちろんです!」と。子どもたちの頑張る姿を見守っていただき、子どもたちの底力を見ていただくことが、子どもたちの自信につながっているのですから。見守ることの真の力が「花まるタイム」には現れている。

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